先日、無事に公害防止管理者を取れたところで、次に受ける試験は環境計量士(濃度関係)。
実態はともかく、行った大学と自己認識は文系である私には、公害防止管理者(の一番簡単であろう水質四種)でも大変だった。
環境計量士となるとさらに難しいところで、まあ正直あまり通る気はしない。
問題のレベルでいえば、化学関係の問題は理系大学生ならわかるべき程度らしいんだけど、世の理系大学生というのは頭のいいもんなんだなあ。同じレベルのことやってみんとわからんわ。
で、もう2ヶ月すこししかないけれど、環境計量士の過去問を調べ調べ、解いていこうと思う。
カッコいいようなことを言えば、意味もよくわかってないのに回答のコツだけ掴んで解けるようになる、みたいなのは嫌いではある。
あるのだけど、そんなこと言ってたら試験までに到底終わりそうにないので、もうとにかく過去問にぶつかっていかなきゃ間に合わないの。
まずは、平成25年度の「環境計量に関する基礎知識(化学)」、環化から。
問1. 環境基本法に関する次の記述の中から、正しいものを一つ選べ。
公害防止管理者の試験でも、環境基本法については触れるから、ここは多少知識があった。
環境基本法は、日本の環境に関する基本理念を定めるものなので、あまり個別具体的なことには触れない。
総務省から
環境基本法を引っ張ってきて、それっぽいワードで検索すると確認もできる。
1は、「温室効果ガス」なんて個別の話なので、環境基本法にはない。
2は、「国民」が「施策を策定、実施する責務を有する」なんてウルトラな文章になってるので間違い。国民じゃなくて地方公共団体。
3は、「事業者」が「法制上の措置」を講じなければならない、なんてやはり無茶なことを言ってるので間違い。事業者じゃなくて政府。
4は、環境基本法第一条そのまま。選択肢の文章にも引っかけみたいな書き換えはない。これが正しい選択肢。
5は、まあパッと見ヘンな記載だし間違った選択肢だけど、「工場」を「環境」に直すと、環境基本法第十条の記述になる。6月5日は環境の日、かつ世界環境デー。
2, 3, 5がヘンなので、悩むとしても1か4、「環境基本法は個別の話はしない」と知っていると1も消える。
問2. 水質汚濁防止法に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。
これは水質関係の公害防止管理者としてわからないといけない……んだけど、あれー?
1は、よく読むと、「水質環境基準に適合しない」とあった。
水質環境基準は、川とか湖沼とか海(公共用水域)がこれくらい綺麗であるべき、という基準。
排出水については「排出基準」が正しい。よってこの選択肢が間違い。
2以降は正しくて、施設の改善や施設の使用・排水の一時停止を命ずる権限が知事にある。
3から、ちゃんと測定して排出しなきゃダメだし記録も残す。
4から、知事がちゃんと見ておく義務がある。知事が指示することになるから当然っちゃ当然か。
5もその通りで、測定計画を作成する。他に、総量規制がかかっている地域については、総量削減計画も立てる。
「水質環境基準」と「排出基準」なんて基本的なことだから、公害防止管理者がわからんかったら問題なのだけど、そもそもそこに目が行ってなかったな……
問3 水質汚濁防止法に基づき、政令で定める有害物質に該当しないものを、次の中から一つ選べ。
数字が漢数字だとか読みづらいところを直して、まとめ直すと。
- カドミウム及びその化合物
- シアン化合物
- 有機りん化合物のうち以下のもの
- ジエチルパラニトロフェニルチオホスフェイト(パラチオン)
- ジメチルパラニトロフェニルチオホスフェイト(メチルパラチオン)
- ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフェイト(メチルジメトン)
- エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト(EPN) - 鉛及びその化合物
- 六価クロム化合物
- ひ素及びその化合物
- 水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物
- ポリ塩化ビフェニル (PCB)
- トリクロロエチレン
- テトラクロロエチレン
- ジクロロメタン
- 四塩化炭素(テトラクロロメタン)
- 1, 2-ジクロロエタン
- 1, 1-ジクロロエチレン
- 1, 2-ジクロロエチレン
- 1, 1, 1-トリクロロエタン
- 1, 1, 2-トリクロロエタン
- 1, 3-ジクロロプロペン
- テトラメチルチウラムジスルフィド (チウラム)
- 2-クロロ-4, 6-ビス(エチルアミノ)-s-トリアジン (シマジン)
- S-4-クロロベンジル=N, N-ジエチルチオカルバマート (チオベンカルブ)
- ベンゼン
- セレン及びその化合物
- ほう素及びその化合物
- フッ素及びその化合物
- アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物
- 塩化ビニルモノマー
- 1, 4-ジオキサン
チウラム、シマジン、チオベンカルブなんか、公害防止管理者ではフルネームにはまったく触れないので、通称だけ知ってればいいと思う。
入ってないのはクロロホルムなので、2が正解。
こいつらには排出基準がかかるんで、公害防止管理者試験にも散々出てる話ではある。
有機塩素化合物はどれがどれだかややこしい。1,1-ジクロロエタンとか混ぜられたら確実に間違うだろうなあ。
クロロメタンとクロロホルム(トリクロロメタン)は入ってなくて、ジクロロメタンと四塩化炭素(テトラクロロメタン)は入ってる。まあ奇数は入らず偶数は入る、ということで。
問4. 大気汚染防止法における用語に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。
大気汚染防止法もよく出るんだろうな。この問題は3でいいと思うけれど。
1は、別に違和感もないと思う。
2も、浮遊粒子状物質とか光化学オキシダントを防止するために揮発性有機化合物の排出を規制してるわけなので、こういう書き方になる。
公害防止管理者の方では、「揮発性有機化合物」からメタンが除かれることが問題に出てたはず。
3だけど、石綿とかの健康に悪いものは「特定粉じん」で、特定粉じん以外の粉じんが「一般粉じん」。よって記述が誤ってるので、これが正答。
4は、まあそのまんま。
5もそのまんま。鉛なんて書いてるのは、昔の有鉛ガソリン時代のが残ってるんだと思う。
問5. 大気汚染防止法に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。
再び
大気汚染防止法。この問題は、よくあるパターンとしては1かな。
1は、やっぱり誤っていて、「規模にかかわらず」とかわざわざ書いちゃってるのがいかにも怪しい。大体こういうワードがある選択肢は間違いで、実際は規模要件がある。
法第二条の4に、揮発性有機化合物排出施設は「排出量が多いためにその規制を行うことが特に必要なもの」と定義されている。
2。そのまんま。
3。水質汚濁防止法でもそうだけど、「どこか特定の場所」とわかってる時はその場所の県知事が出てくる。複数の県にまたがる(河川とか)とか、特にどこと定められないものは大臣がやる。
4。神戸の43号線沿いで測定してるの見かけたな。
5。そのまんま。県のことなので県知事が。
ここまで法律問題でした。ここまではそんなに難しくないな。
問6
プロパンの燃焼反応
C3H8 (気体)+5O2 (気体)→3CO2 (気体)+4H2O(気体)
において、ある温度・圧力における反応エンタルピーをΔH、反応に伴う内部エネルギー変化をΔUとするとき、ΔHとΔUの関係及びこれらの符号はどのようになるか。次の中から、正しいものを一つ選べ。ただし、気体は全て理想気体として扱うものとする。
いきなり熱力学かー……。
正直熱力学はまだよくわかってないので、答えを確認したら、3とのことだった。
燃焼、ということは発熱反応なので、プロパンから熱が外部に放出される。
出た熱の分だけエンタルピーは減るので、⊿H < 0なのはわかる。
圧力は一定なので、エンタルピー変化⊿Hは、
⊿H = ⊿U + p⊿V
と書ける。
変形すると、
⊿U = ⊿H - p⊿V
理想気体で圧力・温度一定なら、物質量あたりの体積は決まる (標準状態で1 mol = 22.4 L)。
反応式 C3H8 + 5O2 → 3CO2 + 4H2O から、反応後に物質量は増えているので、体積も増えるはず。(このへん自分でもそうとう怪しいこと言ってるような気が)
すると⊿V > 0となるので、 p⊿V > 0。
なら⊿U < ⊿Hといえるので、
⊿U < ⊿H < 0、という答えが出るので、正解は3。
こんなんでええんかなあ。さっぱり自信ない……
問7
容積5.00 Lの二つの密閉容器があり、一方の容器には気体Aが、もう一方の容器には気体Bが、それぞれ2.0 mol ずつ入っている。気体Aは理想気体の状態方程式に従い、気体Bは次の状態方程式に従うものとする。
p(V-nb)=nRT
ただし、p は圧力、Vは体積、nは物質量、Rは気体定数、Tは絶対温度、b は温度や圧力に依存しない定数で、b = 0.050 L/mol である。気体A、Bの温度をそれぞれΔTだけ変化させたときの圧力変化をそれぞれΔpA、ΔpB とするとき、両者の比(ΔpA /ΔpB)はいくらか。次の中から、最も近いものを一つ選べ。
なんでこんな質問されてるのかよくわからん……
n = 2.0、V = 5.00。
気体Aについて、理想気体の状態方程式 pV = nRTから、
⊿pA = 2.0R(T + ⊿T) / 5.00
気体Bについて、状態方程式 p(V-nb) = nRTから、
⊿pB = 2.0R(T + ⊿T) / (5.00 - 2.0 * 0.050) = 2.0R(T + ⊿T) / 4.90
ふたつの比は、
⊿pA / ⊿pB = { 2.0R(T + ⊿T) / 5.00 } / {2.0R(T + ⊿T) / 4.90 } = 4.90 / 5.00 = 0.98
というわけで、答えは2。
もっと簡単に解けるかもしれないな。
問8. 10^5 Pa における融点が互いに等しい2 種類の物質A、Bがある。融点における固相と液相の密度を比較すると、Aでは液相の方が大きく、Bでは固相の方が大きい。圧力が10^5 Pa から増加すると、AとBの融点はそれぞれどのように変化するか。次の中から、正しいものを一つ選べ。ただし、この圧力増加に伴う融解熱や各相の密度の変化は無視でき、固相から別の固相への転移は起こらないものとする。
圧力をかけると、より密度が高い状態になろうとすると思うので、Aは液体になろうとする=融点が下がる、Bは固体になろうとする=融点が上がる、んじゃないのかな。つまり選択肢5。
答え見たら、5で正しい。
こんなんでいいみたい。
問9. 以下に示す芳香族化合物(ア)~(オ)のモノニトロ化反応において、ベンゼンに比べたそれぞれの反応性と配向性についての次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。
(ア)がN, N-ジメチルアニリン。(イ)はトルエン。
(ウ)は……N-メチルベンゼンカルボアミド? C6H5-NH-C(=O)-CH3
(エ)はクロロベンゼン。(オ)はベンゾニトリル。
答えを見たら、3の「(ウ)の反応性はわずかに低く、主にメタ体を生成する」が間違いとのこと。
反応性の強弱までよくわからないので、とりあえず配向性に注目してみると。
電子供与性がある官能基がついてると、オルト・パラ配向性を持つ。
トルエンのオルト・パラ位に3つNO2がついたらTNTになるわけだから、(イ)の配向性は正しい。
(ア)もまあ見た感じ電子供与性だと思う。
(ウ)はよくわからない。
(エ)のクロロ基は電子求引性だろうから、これはメタ体を作るんじゃないか……と思ったら、どうも共鳴効果でオルト・パラ配向性とのこと。
(オ)のニトリル基は電子求引性らしいので、メタ配向性になる。
困ったな、配向性が違うものはないかもしれない。ウはよくわからんが。
ところで、電子供与性の官能基がついてると、オルト・パラ位の反応性が高くなる。
電子求引性の官能基がついてる場合は、メタ位の反応性が高くなるんじゃなくて、オルト・パラ位の反応性が低くなるから、相対的にメタ位に反応しやすくなる、ということだそう。
そうすると、(エ)は反応性が低くなるってことはないんじゃないか……と思ったんだけど、ハロゲン基だけはオルト・パラ配向性でも反応性は少しだけ下げる。
こうなると、(ア)も(イ)も(エ)も(オ)も正しいっぽいので、(ウ)しか残らない。
この官能基が電子供与性ならオルト・パラ配向性のはずだし、電子求引性なら「わずかに低く」ってことはなく、少なくともクロロベンゼンよりは低くなると思う。
問10. ア~オのカルボカチオン(カルボニウムイオン;炭素陽イオン)、カルボアニオン(炭素陰イオン)、炭素ラジカルの安定性に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。
(ア)がメチルカチオン。(イ)がイソプロピルアニオン。(ウ)がt-ブチルカチオン。(エ)がt-ブチルラジカル。(オ)がベンジルカチオン。
そもそも知らない言葉が多い問題なので、答えを見ると4の「t-ブチルラジカル(エ)は、メチル基の超共役で安定化されない」が誤っているとのこと。
メチルカチオン(第一級カルボカチオン)が不安定というのと、t-ブチルカチオンが超共役で安定化される、というのは書いてある。1と3は正しいらしい。
Wikipediaの科学関係の記事ではいつものことだけど、素人が読んでもよくわからない
超共役の記事も読みつつ。
t-ブチルカチオンだったら、中央の炭素に電子がひとつ足りないところ、周りのメチル基が電子供与性だからある程度補われてる形になって、それなりに安定する……みたいのが超共役ってことでいいのかな。
だから、メチルカチオン<エチルカチオン<イソプロピルカチオン<t-ブチルカチオン、と超共役の効果が大きくなって安定すると。
メチルカチオンは何も安定化する理由がないから、そりゃ不安定と。
2のイソプロピルアニオンは、アニオンなんだからメチル基から電子を供与されて云々、というのは関係なかろうと思う。
5については、ベンゼン環のπ電子が-CH2の方まで回って安定するというような話。
4のt-ブチルラジカルは、よくわからんかったのでわかる人に聞いたら、これも超共役で安定化するそう。選択肢の記述が間違っているので、これが正答。
電子供与性とかの話じゃないそう。
ラジカルの電子は自由に動けるので、中心の炭素から他のメチル基に行ってる共有電子と、入れ替わり立ち代わりみたいな状態(ベンゼン環でπ電子が動きまわる結果、二重結合と単結合がぐるぐる変わってる、という厳密には違うらしい解釈と同じ感じで)になって、メチル基がない方向にも安定して存在できるようになる……みたいな説明を聞いたと思う。
まあ解釈違いかもしれんけど、とりあえず納得しておく。
問11. ア~エの化合物の構造と性質に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。
難しいので答えを見たら、5が正しいとのこと。
(ア) BF3、(イ) NH3、(ウ) PH3、(エ) AsH3
BF3については、B(ホウ素)は炭素のひとつ手前の原子番号だし、最外殻電子は3つ。
そうすると、3つ単結合ができたら電子軌道はsp2混成軌道になると思う。
素直に平面に120度ずつで結合するんじゃないかな。
双極子モーメントって、まあ極性のことでいいと思うので、これなら無極性。
NH3が三角錐型なのは知ってるけど、これは最外殻電子が5つだから、3つ単結合ができたら、その3つと余った方向とでsp3混成軌道を持つ、って話と思う。
ただ、余ってる電子が、結合してる電子と反発しあってしまう。
すると、余剰な電子が多くなるほど、他の共有結合どうしの角度が押されて、sp3混成軌道の角度より小さくなる。
原子価殻電子対反発則、というそう。
sp3混成軌道の各軌道の角度は109.5度。
「p軌道のなす角」って90度のことだろう。x, y, zの各軸において中心から両側に向けてボールがついてるような軌道がp軌道なので。
原子価殻電子対反発則が強く働いて、まあ大体100度以下くらいまで狭められてしまうようなら、「sp3混成軌道よりもp軌道のなす角に近い」ということになる。
アンモニアだと、窒素に余ってる電子なんて2つしかないので、角度は対して変わらない。108度になるだけだそう。
しかし
ホスフィン(PH3)や
アルシン(AsH3)だと余ってる電子はかなりうじゃうじゃ居そうなので、だいぶ角度は詰まってしまうんだと思う。見るとPH3で93.5度、AsH3で91.6度だそう。
こいつらは当然極性分子なので、どれも双極子モーメントは持つだろう。
そうすると、1~4はどれもおかしいところがない。
NH3は当然ルイス塩基で、
NH3 + H2O → NH4+ + OH-
となるんだったら、
PH3 + H2O → PH4+ + OH-
AsH3 + H2O → AsH4+ + OH-
となりそうなもんなので、(ウ)も(エ)もルイス塩基になるんじゃないの。
問12. 次の記述の中から、正しいものを一つ選べ。
ちょっとした単位の問題と思いきや、さすが計量士というか、いろんな単位のちゃんとした定義を知ってなきゃいけない。
「厳密に等しい」なんて記述は、定義と一致する表現のときにしか使えないと思う。
で、1 atm = 760 Torr = 760 mmHgなので、いきなり選択肢1が正しい。
選択肢2は、「1 atm = 10^5 Pa」なんて、どこにも一致するところがない。
選択肢3は、「1 Pa = 1N / cm^2」じゃなくて、1 Pa = 1 N/m^2。
選択肢4は。
bar、というのも、むかーし天気予報で聞いた記憶くらいしかなかったけど、1 bar = 10^5 Paだそう。
ということは、1 atm = 103.3 kPaだから、1 bar = 100 kPa。1 atm > 1 bar。
すると、理想気体の状態方程式から V = nRT / p。
nRTは一定だから、pが小さいほうが体積が大きい。
よって、選択肢4は逆のことを書いている。正しくない。
選択肢5は温度が違う。
800 mmHg = 800/760 atm = 20/19 atm。
V = nRT / pより、
n = 1, T = 273, p = 1なら、V = 273R。
n = 1, T = 273 + 25, p = 20/19なら、 V = 298R * 19/20 = 278.1R。
800 mmHgの方が体積は大きくなるので、選択肢5もちゃんと間違い。
実は「Torr (= mmHg)なんて単位が厳密に定義できるわけがない」なんて考え過ぎてしまって、選択肢5まで律儀に確認してしまった。
やっぱり計量士の試験なんだから、気圧以外も含めて、単位はおさらいしておくべきかな。
問13. 以下に示す平衡反応に関する次の記述の中から、正反応が発熱過程である場合に必ず当てはまるものを一つ選べ。
A ⇄ B
とりあえずA→B + x kJの発熱反応だったら、温度が上がると正反応は遅くなって逆反応は速くなるように思う。
選択肢2, 3はあべこべ。
平衡時の量にしても、温度が上がれば正反応が進みにくくなって、Bの生成量は減る。
4は正しそう。5はあべこべ。
1はどうなんだろう。
速度は遅くなるけど、Bの生成量は減って、平衡するまでの反応の量は減る。
まあ、問題文が「必ず当てはまる」とあるので、速度が遅くなる以上に生成量が大きく減って、結果的に早く平衡に達するような場合もありうるのかもしれないなあ。
ということで正解は4だった。
本当は反応速度論とか化学熱力学とかに基づいて考える問題なんだろうかなあ。
問14. ある難溶性無機塩A3X2 を一定温度で水に加えてよくかき混ぜたところ、一部が溶けずに残り、A(2+)とX(3-)を含む飽和溶液となった。用いたA3X2 が全て溶けていれば1×10^-5 mol/Lの溶液となるはずであったが、実際には20%が溶け残った。この塩の溶解度積を求める計算式として最も適切なものを、次の中から一つ選べ。ただし、A3X2はA2+とX3-のイオンの形でのみ溶解するものとする。
ものが難溶性塩なので、水に入れると、
A3X2 ⇄ 3A + 2X
という形で、平衡状態になって電離する。
溶解度積Ksp = [A]^3 × [X]^2で求められる。
[ ]でくくってるのはその濃度。
溶けたA3X2は80%なので、[A3X2] = 0.8 × 10^-5 mol/L。
[A]は、A3X2の3倍の量ができているので、 2.4 × 10^-5 mol/L。
[X]は、A3X2の2倍の量ができているので、 1.6 × 10^-5 mol/L。
[A]^3 = 2.4^3 × (10^-5)^3。
[B]^2 = 1.6^2 × (10^-5)^2。
[A]^3 × [B]^2 = 2.4^3 × 1.6^2 × (10^-5)^5。
ということで、選択肢3と一致した。
問15. 環状構造をもつ構造異性体が存在する化合物の分子式を、次の中から一つ選べ。ただし、電荷をもった構造は除く。
選択肢1はC2H4なんてエチレン以外ないので違う。
環状というと、シクロアルカンかベンゼンか。
シクロアルカンならCnH2n、ベンゼンならCnHnになる。
環状部の他になにか直鎖で残る部分があるならば、環のHが-1され、残りがアルキル基ならCxH2x+1となって、余る原子がなくなる。
選択肢2のC8H16Oならどうだろう。
ベンゼン環とアルキル基とすると、C6H5-C2H11O、と水素が余り過ぎ。
シクロヘキサンとアルキル基とすると、C6H11-C2H4OHという形が取れそう。
C6でなくてもC3~C7まで同じように取れるし、C8H15-OHとしてもいける。
選択肢3はC10H21F。
ハロゲンは単に水素を置換したものとみなせばいいだろうから、C10H22。
これだと、環状部のないアルカンなら普通にC10H21Fが作れるけど、環状部を作るとどうやっても水素が余る。
選択肢4のC14H29Clも、C14H30と同等と見て、やはり直鎖でないと水素が余る。
選択肢5のC19H40も水素が余る。
よって選択肢2が正解。
これは難しくないな。
問16. 以下に示す化合物がイス形構造をしているとき、臭素原子がエカトリアル位にあるならば、アキシャル位にある水素原子の数はいくつか。次の中から、正しいものを一つ選べ。
まだ勉強してないので、立体構造の話をされると辛いのだけど。
イス型って多分あれ、横から見たら∫みたいに互い違いに折れ曲がってるやつだろう。
臭素原子がエカトリアルだとすると、付け根の炭素原子から出てる結合手は三角錐の頂点方向だろうから、水素の方をアキシャルと考えるのが素直かと思う。
全部エカトリアルなんてことはないんだろうし、どれかひとつエカトリアルかアキシャルか決めないと全体も決まらないんだろう。
環の見えてる側を表面として、臭素原子のついてる炭素が裏面側に折れてると考えて。というか、そうとしか考えられないか。
そこから時計回りに隣の炭素は、下の塩素原子は図の角度からなら右手前側に出ていて、水素原子は真上に出る。ふたつめ。
その隣の炭素は、上の塩素原子が左手前側に出ていて、水素原子が真下に出る。みっつめ。
その隣は、図の下側に書いてる水素原子が左下側に出ていて、上側の水素原子は真上に出る。よっつめ。
その隣は、上の塩素原子は右奥側に出て、水素原子が真下に出る。いつつめ。
最後の酸素原子は考える必要もないので、正解は5になる。
この程度なら知ってりゃ難しくはなさそうだ。
問17. カルボン酸を生成しない反応を次の中から一つ選べ。
選択肢1。
安息香酸エチルと水酸化ナトリウムだと、C6H5-COOCH2CH3 + NaOH → C6H5-COONa + CH3CH2OH、になるのかな。まあエチル基も安息香酸エチルでいるよりは、エタノールになりたい気がする。
でもってナトリウムの方が水素よりイオン化傾向高いだろうから、安息香酸ナトリウムでいるよりは安息香酸でいるほうが落ち着くんでないか。
まあこれなら生成するんでは。
選択肢2。
こんなんカルボン酸と関係ある……?
選択肢3。
エステル化して酢酸メチルができる気がするんだけど……
あれ?と思って調べたら、無水酢酸なので、
CH3C(=O)-O-(O=)CCH3 + CH3CH2OH → CH3COOCH2CH3 + CH3COOH
となって酢酸もできてる。
その酢酸がまたエタノールと反応して酢酸メチルになっちゃうっぽいけど、まあ最終的に生成されるのが、という限定はないので。
選択肢4。
CH3CN + 2H2O → CH3COOH + NH3、となるらしい。
選択肢5。
酸化クロム(Ⅵ)なら
C6H5-CHOをCrO3と反応させれば、まあ酸化して安息香酸になんのかな。
2C6H5-CHO + 2CrO3 → C6H5-COOH + 2Cr2O3 + O2、とかでいい?
ちゃんと理屈をわかって解けるべき問題だろうけど、どうもちゃんと理屈のついてないところがあるな。
時間もないから、何度もやって慣れで解くしかないか。
問18. 1 mol/L硫酸水溶液中、1 mol の過マンガン酸カリウムで何mol の酸化ひ素(Ⅲ)が酸化されるか。次の中から、正しいものを一つ選べ。ただし、反応は副反応を伴うことなく定量的に進行するものとする。
過マンガン酸カリウムの酸化反応って、酸化還元滴定を実際にやったりまでしたのになあ。
なんか、やるたびに悩んでる気がする。習熟てきてないな。
先に答えを見ると、4の5/4 molが正答。
とりあえず、過マンガン酸イオンの半反応式は以下。
MnO4(-) + 8H(+) + 5e(-)→ Mn(2+) + 4H2O
酸化ヒ素(Ⅲ) As2O3が酸化されるとすると、As2O5になるみたいなんだけど、足りない酸素原子をどこから持ってくるかというと水しかないか。
As2O3 + 2H2O → As2O5 + 4H(+) + 4e(-)
半反応式を合わせると、
4MnO4(-) + 32H(+) + 20e(-)→ 4Mn(2+) + 16H2O
5As2O3 + 10H2O → 5As2O5 + 20H(+) + 20e(-)
4MnO4(-) + 5As2O3 + 12H(+) → 4Mn(2+) + 5As2O5 +6H2O
ということになるのか。
では、過マンガン酸カリウム1 molに対して、酸化ヒ素(Ⅲ)は5/4 molが酸化される。
硫酸の濃度がわざわざ書いてるから、もしかして水素イオンの消費量についても考えなきゃならんのかと思ったんだけど、総量の指示はないから、濃度だけじゃ水素イオンの量なんて決まらないね。
単に、1 mol/Lなら濃硫酸じゃなく希硫酸だというだけのことと思う。
あんまりpHが高すぎるような条件だと、過マンガン酸イオンの酸化反応がまた違ってくるみたいで。
問19. 二酸化炭素と同数の非共有電子対(ローンペア)をもつ分子を、次の中から一つ選べ。
二酸化炭素なら、O=C=Oとして、両側のOに2組、合わせて4組の非共有電子対がある。
選択肢1はアンモニア。NH3だとNに1組あるだけかな。
選択肢2は塩化水素。HClだとClに3組。
選択肢3は水。H-O-HだからOに2組。
選択肢4は酢酸ときたか。CH3-C(=O)-O-Hだと、(=O)に2組、-O-に2組でいいんよね。
選択肢5はメタン。これは非共有電子対はない。
じゃあ4の酢酸で。
これは難しくない。
問20. 分子の電磁波吸収に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。
詳しくは知らん話なので答えを見ると、正答は2で、「遷移する準位間のエネルギー差が大きいほど、吸収される光子数は多くなる」が違うらしい。
まあ、蛍光光度計なんかで、吸光して励起して基底状態に遷移しつつ発光する……といった話を聞いてる時、光子の数を云々した記憶はない。
よりエネルギー差が大きいなら、より波長の短い=振動数の多い光を吸収してるんじゃないかな。
大気中の二酸化炭素を赤外線吸光をもって測ったりするけど、それはC=Oの結合が赤外線を吸収するんだ、と聞いたことがある。
電子遷移は、光のエネルギーを受けて電子が外の軌道に移っちゃうような話と聞いてるので、上の話より小さいスケールの話だから、赤外線より波長の短い紫外可視光で起こりそう。
マイクロ波は赤外線よりさらに長い波長のものだから、分子間の結合より大きいスケール、分子そのものの運動に対して起こりそう。
3~5は、こんな認識でよければ順当な話っぽい。
1はまあ、アタリマエのこといってるだけ。
役に立たないと評判の「環境計量士への近道」、買ってしまってる(第10版)ので調べてみると、「2.11.1 電磁波」の項に、びっくりするほど簡単に解説がある。
X線では、内殻の電子と相互作用して、吸光・蛍光・回折が起こる。
紫外・可視光では、原子の外殻電子や分子軌道電子に相互作用し、吸光・発光・蛍光が起こる。
赤外線では、分子振動に吸収される。
マイクロ波だと、磁場中不対電子に吸収されたり、分子の回転に吸収されたりする。
ラジオ波になると、磁場中の原子核に吸収されるとのこと。
ほんとにそれくらいしか書いてないので、これくらいの理解でいいんかなあ。
「近道」に載ってないこと、載ってるより高いレベルのことってバンバン出題されるけども。
問21. 異なる同位体から構成される一酸化炭素、(12)COと(13)COとを比較した場合に、(12)COのほうが小さい値となるものを、次の中から一つ選べ。なお、O(酸素)には質量数16 の同位体だけが存在し、(12)COと(13)COはそれぞれ純度100 %の理想気体であるとする。
選択肢1は、別に炭素の原子核の中性子数が変わったって、理想気体扱いなら状態方程式pV=nRTに変わるところはないだろうから、同一温度・圧力・体積なら分子数nはいっしょ。
選択肢2は、内部エネルギーは温度のみによって決まるから、どちらも同じになるべき。
かつ、内部エネルギーは分子の運動エネルギーの総和だから、分子の質量が大きくなると運動エネルギーも大きくなる。ということは、質量が大きい(13)COの方が速度を下げないと、内部エネルギーが一致しない。
ということは、(12)COの方が分子の並進運動の早さは大きい。
選択肢3は、これも2CO + O2 → 2CO2の反応に中性子数は関係しないだろうから、生成量はいっしょ。
選択肢4は、運動するなら質量が大きくなると速度は下がるだろうから、(12)COの方が振動速度が速くなって振動数は大きくなる。
選択肢5は、同じ加速度を与えるなら、質量が大きくなるほど大きい電場が必要だろうから、(12)COの方が電場は小さくてすむ。
ということで、選択肢5が正答。
問22. よう素及びセシウムの放射性同位体(131I:半減期約8 日、137Cs:半減期約30 年)に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。
選択肢1。セシウムもアルカリ金属だから、負荷電の成分と結合しそう。
選択肢2。崩壊の仕方が同じだったら、半減期早いほうが放射能は高い気がする。
選択肢3。(131)I / (137)Cs だったら、そりゃ減るのが遅い方が分母なんだからどんどん低下するよね。
選択肢4。これはよく言ってる話なので。
選択肢5。どっちも存在する。
よって2が誤ってるので正答。
放射線とか原子核崩壊とかについてはちゃんとした知識はないけれど、これくらいならまあ。
問23. 炭素の同素体に関する次の記述の中から、正しいものを一つ選べ。
選択肢1。
ケイ素に3価の元素(アルミニウムとか)を混ぜたら、正孔を持つp型半導体になるけど、炭素でも理屈ならあるような気はする。実際あるかは知らない。
選択肢2。π結合なら電気伝導性はあるんじゃないかな。
選択肢3。シート間は単にファンデルワールス力でしか結合してないから剥離する。σ結合って共有結合の単結合なんだから、そんな強い結合なら剥離はしない。
選択肢4。sp2混成軌道できっちり120度だったら、平面にしかならない。
選択肢5。カーボンナノチューブはチューブ状になってるから、一直線になんてなってない。
選択肢1が正しい。
問24. 化学結合や分子間相互作用の強い順として、次の中から、正しいものを一つ選べ。ただし、典型的な強さで考えるものとする。
これは悩むまでもなく、共有結合>水素結合>ファンデルワールス力による相互作用、だから答えは選択肢1。
問25. ある単原子分子理想気体の体積を変えずに、温度を300 Kから420 Kに上げた。この分子の420 Kにおける平均運動エネルギーは、300 Kのときの何倍になるか。次の中から最も近いものを一つ選べ。
平均運動エネルギーだったら内部エネルギーと比例関係だろうから、内部エネルギーなら温度に比例するので、単に1.4倍でよし。
平均運動速度とかいわれるともう少し変わってくるけれど。
答えは選択肢2。
うーむ、実戦では1時間10分で解かなきゃならんのだけど、知らないこと調べてたら10時間はかかったな……
この科目は知識問題が中心みたいだから、数こなして覚えれば対応できるか。